トップコメント:2019年の年頭にあたって

2019年の年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
旧年中は、当研究室の活動に対してご支援とご協力を賜りましたこと、心から御礼申し上げます。
ここに改めまして、当研究室に関係する皆様のご多幸とご健勝、そして皆様のご活動のご繁栄を心よりお祈り申し上げます。

2018年は、当研究室の運営・活動体制を大きく見直す年でした。
1月には松浦研究室のホームページを新設し、松浦研究室の理念や研究体制、学生の育成面での取り組みについて社会に幅広く公開することができました。
そして、松浦研究室の理念に基づいて研究室に所属する学生は、真剣に自分の将来と向き合った結果、学生自らの志向に合った進路を選択し、松浦研究室の卒業生と同様に自分の夢と掲げていた就職先からの内定獲得に至りました。
指導者としてできることは大変限られていましたが、学生自らが能動的に活動してきたことが実を結んだ瞬間でもありました。指導者としても大変誇らしく、その成長を目の当たりにすることができました。私も学生が出した成果が大きな励みにもなり、学生達には心から感謝しています。

さて、研究活動面では、「研究成果を必ず社会に還元する」ことを前面に出して、社会における科学技術上の課題を解決する研究テーマを積極的に進めてきました。
そして2018年12月、松浦研究室のセカンドステージとして、「化学+AI」を研究方針とする内容についてホームページに掲載し、「化学」と「AI」の関係性を示すコンテンツや、これから埼工大を目指す高校生の皆さんや本学の在校生向けに、松浦研究室で行っていることをより明確にお伝えするコンテンツを新設しました。

世間では、急速な情報技術(IT:Information Technology)の発展に伴い、情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)やモノのインターネット(IoT:Internet of Things)へと進化を遂げております。
しかしこれら技術は、膨大なデータを収集するための一つの手段であるため、IoT等によって集められたデータを基に新たな価値を生み出すための一つの道具にすぎません。従って、これら技術が進化した先には、それら技術のシステム化と効率的活用のためのプログラムを設計するという大きな壁が立ちはだかります。つまり、開発した道具をどう使うかが問われる訳です。

松浦研究室では、特にエネルギー関連技術や物質情報変換技術について、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を加えることで、人間の脳で行う作業をコンピュータが模倣し、人間の自然言語の理解や論理的な予測、経験則から学習するプログラムを融合させ、素早く社会に適応できるエネルギーシステムや物質情報変換システムとして研究成果を社会還元することに取り組んでいきたいと考えております。

AI技術は、最近の科学技術の進歩に欠かせないものとなっています。例えば、AI技術を使って、個人のライフスタイルを分析して、お客様にフィットするクラフトビールを勧めるサービス(キリン)や、スマホ向けニュースアプリで、AI技術が利用者の閲読傾向に合わせてニュースを配信するパーソナライズ(個別化)が急速に進んでいて、「グノシー」と「スマートニュース」が一昨年から段階的導入、「LINE」も昨年から始め、「Yahoo」も段階的に導入しています。また、日本政府が2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えて、交番や観光案内、入国管理等の幅広い場でAI技術の活用を検討しており、現在は英語検定のTOEIC(990点満点)で900点以上を取る人と同等の翻訳力を有するAI技術が開発され、日英では数百万通りの文章の対訳データを備え、何とたった1秒程度で翻訳できる機能が実現しているそうです。

これまでの価値判断や社会システムが大きく変化する、100年に一度の、もしかすると人類がこれまで未経験の大革命が間近に迫っている事実は論を俟たないことは明白です。
従って、そのような社会実現の潮流に乗り、研究成果をタイムリーに社会還元するには、一分野での研究だけではなく、異分野の研究との共創による技術革新が必須となります。

今年の4月より埼玉工業大学では、工学部情報システム学科にAI専攻が新設される予定です。「AI」を専門に学ぶ学生と「化学」を専門に学ぶ学生が協働した時、どういった学生の教育的効果および研究成果が期待できるのか、教育の面でも研究の面でも大変興味深いものであると思っております。

「指導者として、学生と共に“真のオンリーワン”を創出し、それを必ず社会に還元する。」
この一言で示される意味を十分理解して実現させるために、2019年も真摯に一致団結して行動していくことをここにお約束したいと思います。

引き続き、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。

The Pride of JAPAN at 2019

平成31年1月1日
学校法人智香寺学園 埼玉工業大学
工学部 生命環境化学科
大学院工学研究科 生命環境化学専攻
大学院研究教育担当資格:博士マル合(Dマル合)教員
准教授 松浦 宏昭(Hiroaki Matsuura, Dr.)