第2回:松川理事長との対談(その2)

研究室で何してる?!
第2回目は、本学の松川聖業理事長との対談の第2弾として、研究活動に関する対談内容をご紹介します。

“研究しよう”という気持ちを常に持ち続けているからこそ、ふとしたきっかけから研究のアイデアが生まれることが多い

知的な学術研究は、多彩なアイデアから生まれ、独創性(オリジナリティー)の高いものほどのめり込める。
何故なら、今まで誰も知らない自然科学現象を発見したり、新たな技術を発明したりすることは、理系人間の知的好奇心を擽り、ワクワク・ドキドキする瞬間を感じることができるから。
埼工大は、自由闊達な環境の下で、発見・発明を具現化できるとても素晴らしい場所です。理系研究室を運営する者にとって、これは代え難い喜びであり、ここで仕事をしていて良かったと感じることができます。
でも学生にとって大学での研究は、卒業がかかった人生の大勝負。教員と学生の立場の違いがハッキリとした意見が数多く出てきました。

 松川理事長>

理系学生の研究って、夜遅くまで研究室で黙々と実験しているイメージがあります。
そんなに卒業研究にのめり込める理由や研究で大変なところは一体何なのでしょうか?

 内田(学生)>

私は企業から内定が出てから本格的に卒業研究を開始しました。
卒業研究について振り返ってみると、もうとにかく色んなことが思い出されます。

 松浦准教授>

早めに卒業後の進路が決まったキミには、今年度初の試みの研究テーマで、データの蓄積が殆ど無かったから、
「チャレンジングな研究テーマで大変だろうなぁ」と思っていたけどね。

内田(学生)>

3年生までの学生実験は、教本の通りやればちゃんと結果が出て議論できる訳なので、どちらかというと化学実験の基礎知識を学ぶことが主でしたが、卒業研究は過去に誰もやったことがないテーマに挑むので、答えが分からない。しかも、実験して得られたデータを、どう解釈してよいかが分からないので、最初はとても大変でした。

 菊池(学生)>

自分も早い時期に企業から内定が出ましたが、趣味のラグビーをやりたくて、遠征試合に行ったりしていたので、本格的な卒業研究の開始は内田君より遅かったです。自分も思った結果がなかなか出なくて、先生とディスカッションして、こういう実験をすればこういう結果が出るのではないかという見通しを立てて実験に臨むも、期待したデータが出ない日々でした。

松浦准教授>

そうそう、キミの場合は僕が予想した結果と違うデータが多くて、たぶんディスカッションして得られると予想した結果を外した確率は95%くらいじゃない?

松川理事長>

えっ、それは松浦先生の推測が間違えていたということなの?

菊池(学生)>

ホントそうですよ。結果が出ないと卒業できないので、こっちも必死なんですよ。
先生にデータを見せても、「ん~、これ分からないなぁ」って平気で言うから、メチャメチャ焦ります。
でも、分からないことを解明することは大好きなので、ふとした時には研究のことを考えていたりしています。

松川理事長>

いいじゃないですか、まさに研究って感じがしますね。
思い続けることでアイデアが生まれ、次の突破口が開けるのではないでしょうか。

内田(学生)>

まだ「失敗と成功の連続」ならいいのですが、「挑戦して失敗の連続」なので、正直きつい面も確かにありました。

松川理事長>

内田君のその経験は大きいです。なぜ失敗するかというと、チャレンジするから失敗するんですよ。
チャレンジしない人は失敗もしない。「失敗を重ねて、ようやく成功かも?」を追い求めるのが研究なのでしょうね。

松浦准教授>

「化学は実験をやって理解する」学問だと思っていますので、「論よりデータ」なんです。頭でいくら考えたって、それがデータで証明できなければ成功ではありません。だから、思ったことは、確実におかしいと思わない限り、とりあえず実験してみようというのが私の研究に対する心得でもあります。その時重要なのは、「気づき」なんです。気がつかないと、本当は重大な発見を示唆するデータだとしても、気づかれないままお蔵入りとなります。

内田(学生)>

最近思うのですが、「どうしてこうなるのだろうか?」ということを常に考えて、これまでの知識も活用していくと、気づいてみれば「そういうことだったのね!」というひらめきやアイデアが生まれてきた気がしています。

菊池(学生)>

私も、遊んでいる時もふと研究のことを思い、友達と研究の話をしていることがあります。今やっている卒業研究は、内田君や他の友達と伊香保温泉に行ってお風呂に浸かって研究の話をしていた時に閃いたアイデアがきっかけです。とにかく温泉はすごいです!

松川理事長>

プライベートでも研究の話をしているところはすごいですね。もしかして、松浦研で行っている今の研究は、偉大な発見・発明に繋がる布石なのでは?もしそうであれば、化学の常識が変わる大きな研究成果が得られるかもしれないですね。今日は、皆さんから色々なお話を聴くことができて大変面白かったです。

 

 
松浦研究室の学生は、研究もそうですが自分の趣味や遊びを大切にしている学生が多い気がします。例えば、実験室で毎日研究している学生が、数日研究室に来ない時があります。体調でも崩したのかと心配していると、研究室の仲間と「温泉に行ってきました」とか「海に行ってきました」とか「星空を見に行ってきました」等々・・・。まぁ、「たまには息抜きも必要かもね」と思っていると、翌日から黙々と研究している姿があります。しかも、仲間と遊びに行った先で何をしてきたかと聴くと、「遊びながら研究の話をしていました」という仰天の言葉が返ってきた。松浦も、大学を離れて出張用務先への移動時間や家に帰った時も、一人になった瞬間から今学生達と進めている研究のことを考えている時が多々あります。常に研究のことを思い続けることが閃きに繋がる。根気強く継続していれば、いずれゴールに辿り着くことを信じて、そのことを思い続けながら日々研究を続けていくためのモチベーションを維持しています。

次回(第3回)は、松浦研究室の学生と共に現在取り組んでいる研究開発について紹介の予定です。